それぞれの幸福の自給自足法

2016年12月2日(金) @下北沢B&B

3.「人からどう思われるか」を基準に生きるのをやめる

鶴見 ちょっとじゃあ、

大原 近況とか。

pha ああ、そういう話……

鶴見 私がじゃあ、2人の本について。私本がないんで(笑)。新刊もっとずっと前になっちゃうね。オレ。

4年前ぐらいかな。『脱資本主義宣言』。それもいい本なんで。「なんで頑張らなきゃいけないのか?」っていうのが経済を通して書いてあるんで。あれなんですけど。

pha カウンターの方で売ってますので。

大原 分かりやすいですね。

鶴見 私は本の感想をちょっと。

大原 はい。改めて聞いたことないから。ちょっと新鮮ですね。

鶴見 共通点だなあという、この2つの本の。何かこう……2人とも基本的に主張してんのは、周りの人が勧めるような生き方じゃダメだっていう。

自分の頭でちゃんと「自分がどうすれば幸せなのか?」とか、自分に何が合ってんのか考えて、そうしないと幸せになれないとか、楽になれないということをすごい言ってる。

両方とも一番言いたいことはそんなことなんじゃないか? というですね、気がして。確かに重要なテーマだよね。すごくね。

我々って、他人がどう思うかっていうことばっかり考えながら生きてるじゃないですか。

フェイスブックとかそういうのやってると、いかに人が「いいね」って押してくれるかを基準に行動して、写真とって、それをアップとか。そんなことばっかりになってきちゃって。

まあ、ずーっと長い間、大衆社会とか成立してから、ずっとわりとそんな傾向が続いてると思うんだけど。

意外と「どうやって生きたいか?」まで考えてる人、もうほとんどいないというか。

周りが期待する生き方というのを熱心に推測して、その通りに生きることはすごい上手くなったような気がしているので(註1)。

それに対してすごい有効なカウンターだという風に思いましたよ。

大原 でも、その人たちはその方が楽だから?

鶴見 いや、ほんともうさあ、やっぱり自分が生きたいように生きることってすごい難しいと思うんですよ。そっちの方が。

部活にね、「任意だから」って言われてるのに全員部活に入っちゃう。そっちの方が楽だから。

ほんとは自分が放課後は音楽を聴いたり、本を読んだり、自由に過ごしたいと思って一人だけ自分の好きな放課後の過ごし方するの大変だよね。

みんながやる通りにやるのってすごい簡単なんですよ。だからこそ、みんなが同じようにしちゃうようなことになっちゃうと思うんだけど。

で、やっぱ大変だから。自分が、一人一人自分で考えなきゃいけなくなるからね。やっぱね。自分に何がふさわしいのか? とか。

それをやめちゃってるような感じもあるので。何かすごい良い問題提起だなと思いましたよ。2冊とも(註2)。

大原 あと、間違った時に人のせいにできるからっていう。

鶴見 間違ったときはみんな一緒。

大原 (笑)

鶴見 自分だけのせいじゃない。誤るときはどうせみんな一緒なんだから、とか。楽ですよね。人と同じこと言ってりゃいいんだもん。

大原 私それが辛いんですよ。phaさんどうですか?

pha うーん……その間違った時に?

大原 みんな一緒のことをやるのがすごく辛くて。

pha あー、辛いですね。辛い……何かできない。ついていけない感じ。脱落してしまいました。

鶴見 あ、そうそう。その中でいるのは、またそれはそれでね、合わせる辛さはあるけどね。確かに。イージーではあるよね。生き方として。そっちの方がこう……。

大原 目先の簡単さだけというか。目先の楽さだけ見たらそうかもしれないんですけど。

5年10年スパンでみると、やっぱりねえ、自分の感覚で、価値基準で物事を選んでいった方が最終的には楽

鶴見 幸せに。

大原 だし、幸せじゃないのかなあと思うんですけど。

pha 自分の価値基準と全然違う価値基準で動いてるとこに入って過ごすのとか――働いてる時とかそうだったけど――苦痛でしたね。もたなかったですね。

鶴見 俺も就職したときはそうだったです。

pha 全然興味持てなかった。

鶴見 まあ、辛いっちゃ辛いのか。そっちはそっちで。

でも一人になって自分がやるのも、やっぱりある種のすごい不安との戦いとかになってくる。その不安の方が辛い人もいるだろうから。世間の目とか。

pha 世間の目ね。とくに世間の目……みんな気にしないと思いますね。この辺(笑)。

大原 この辺の人たち。

鶴見 それはさあ(笑)、その気にしなさ具合と適応できなさ具合が極端なので(笑)。他の人そこそこみんな適応できたりするんでしょ。きっと。

pha そうですね。

鶴見 私はちょっとダメだった。

pha 何か最近バイト始めたけど、もうけっこう辞めたくなってるんですけど。2、3ヶ月ぐらいで。

別にバイト自体がキツイわけじゃないし、別にバイト先の人いい人なんですけど。8時間ぐらいわりと座ってる。パソコンに向かってるみたいな感じなんですけど。

メッチャ疲れ果てて。終わったら、終わった途端バターンと倒れて2、3時間寝ないと何もできないみたいな感じになって。何か消耗具合がすごいひどい。

これは前、むかし会社で働いてたときもそうで。同じだったんですけど。でもこれで別に消耗しない人が「世の中には多いんだなあ」と思って。

会社終わった後、みんな飲みに行ったりとかしてるけど絶対できないと思ってたんですよね。疲れ果てて。それ所じゃなくて。「早く横にならなければ」みたいな感じで。

そういう……体力なのか気力なのかわかんないですけど、そういうのでもう「やろうと思ってもついていけない」っていうのがありましたね。

大原 普通にできちゃう人もいるんですよね。12時間労働とか。

pha そうですね。

大原 だから何か

pha 徹夜とかね。

大原 いま――私あんまり政治に詳しくないんですけど――残業時間を規制するって動きがあるらしいですね。

鶴見 あるある。

大原 あれ、12時間働きたい人はどうするんですかね。

pha あー……。

鶴見 早く終わらせる。

大原 あー、そうなるんですか。

鶴見 時間内に収めるという。けっこう時間内の忙しさがすごくアップするんじゃない? そんなに仕事がある人はね。

大原 ほんとに風通しがいい状況って、働きたい人はどんどん働いて、早く帰りたい人はどんどん定時に帰ってみたいな。

pha そういう感じになればいいですよね。ただ同調圧力とかで、ちょっと帰れないみたいなのが良くないので。

大原 私だからフランスがね、話は飛びますけど。フランスってバカンスを8週間でしたっけ? 取らなきゃいけないっていう義務感。全然羨ましくないんですよ。

取らなきゃいけないのは嫌。

pha (笑)あー、そっかー。

大原 取りたくなかったらどうするんだろう? って思う。だから取りたい人が取りたい分だけ、取りたくない人は取らないっていう。

制度じゃなくて、そういう社会になってる方が一番生きやすいですよね。でもなんないんだよねえ。

鶴見 みんな年収90万でハッピーライフである必要はないわけですよね。

大原 うん。

鶴見 全員がこれっていうのはまたおかしいから。

大原 おかしい。おかしい(笑)。

鶴見 各自が自分なりに考えて、この人は年収90万でハッピーライフ、この人はバリバリ働いてハッピーライフとか。各自勝手にやるのが理想なんでしょうね。

大原 ほんと各自がハッピーの方が一番いいと思いますよ。年収とかじゃなくて。

鶴見 自分なりのやり方で実現できればという。そういうことけっこう主張してるもんね。自分で考えて、自分なりに見つけるんだみたいな。

大原 不親切ですよね。だからこの本たちは。

pha ん? そうですか?

大原 答えをあんまり言ってないというか。具体的な。phaさんのこれすごく詳しくなってるけど、結局わたしの本は「自分で考えてくださいね」って本だから。

pha でも僕の本もそうだし。人それぞれ違うから。自分に合ったのを自分で見つけてもらうしかないんじゃないですかね。

鶴見 ところで、「最近はどうしてるのか?」という話題に。

大原 最近ねえ。僕からいいですか?

pha あ、どうぞ。

大原 ご存知の方もいるかもしれないんですけど、私いま台湾に住んでまして。この本が出たすぐ後ぐらいに引っ越したんですね。

なんで引っ越したかと言うと、ワーキングホリデーっていう制度があるんですけど。そのワーホリのビザが取れるの30歳までなんですよ。

せっかくだから「どっか行きたいなあ」と思っていて。わたし隠居生活にもそんなに執着がもうないというか。「海外でできたら面白そうだな」って思ってましたけど。

ちょっと住んでたことがあるイギリスのビザを申請したんですけど、イギリスのビザがもの凄く競争率が高くて。取れんかったんですね。

なので「どうしようかな」と思ってたら、私の1冊目の『20代で隠居』っていう本が台湾で翻訳されるって話が来たので。

「台湾もいいなあ」とか思って調べたらワーホリがあったんで。それで台湾に行ってしまいましたね。

pha おー。

大原 だから何か仕事のツテとかコネとかがあったわけでは、まったくなくてですね。

pha 知り合いとかいたわけでもない。

大原 いなかったですよ。流れっていうか、成り行きっていうか。それで行ってしまいましたね。まあ「台湾で隠居できたらいいなあ」とか思ってるんですけど。

pha 台湾隠居暮らしはすごい良さそうですよね。

大原 でも生きやすいというイメージがありますけど、やっぱり台湾には台湾の生きづらさもあってですね。

pha あ、そうなんですか?

大原 やっぱり物価が安いってことは、時給が安いんですよ。

それで台湾の最低法定賃金って言うんですかね? 120元ぐらいなんです。コンビニで1時間働いてそれぐらいなんですけど。日本円で400円ぐらいなんですよ。

鶴見 半分以下だね。

大原 そう。なのに、CONVERSEのスニーカーとか日本で売ってるのと変わらない値段だし。スタバとか日本より高いし。ユニクロも日本より高いし。

pha その辺は高級品扱い?

大原 何か舶来物って、やっぱり高級なイメージが付くんですかね。

ってなもんで、あんまりやっぱりねえ……そんな「全方位的に生きやすい社会はないなあ」とか思いながら現地でいま隠居の仕事を、あ、隠居の仕事っていうか(笑)

pha 隠居の仕事(笑)。

鶴見 仕事にしてますからね。それを。

大原 あのね、介護の仕事を何とかできないかなあとか思ってて。台湾はね、介護の仕事がまだプロフェッションとして確立してないんですね。

pha あー、そうなんですね。

大原 何かやっぱり大家族主義の延長っていうか。家族がみるのが当たり前って。まあ、それもちょっと最近古くなってきてて。

お手伝いさんが延長でやってるみたいな感じで。インドネシアとかフィリピン人の人が車イスを押してることが多くて。

やっぱりそうは言っても、それ国が制度としてビザを発行して来てもらってるみたいなんですけど。

そうは言ってもやっぱりねえ、日本の資格を持った介護士さんの仕事と比べたらほんとに比べものになんないっていうか。

僕が見たことある中では、MRTっていう地下鉄に乗ってきて、車イスの老人をほったらかして自分が離れた空いてる席に座ってるインドネシア人とか。

あと公園につれて行ってるんですけど、自分の家族連れてきてほったらかしにしてるとか(笑)。

pha (笑)

大原 することが多くて。日本の介護士さんは台湾に行ったら大人気なんじゃないかな? って思うんですけど。まあまあ、そんなことをしつつ介護はできてません。

鶴見 月何万ぐらいで過ごしてるんですか?

大原 あのね、ほんとに切り詰めれば3万ぐらいでやってけると思います。

鶴見 3万円でそのうち家賃はいくらぐらい?

大原 いま1万5千円ぐらいです。

鶴見・pha おー。

大原 (笑)郊外にですね、要するに「東京でやってた隠居のセオリーが海外で通じるか?」っていうのをやってみたくて。

郊外の大学のある街で、学生用の安いアパートとか安い食堂がたくさんあるような所だったら「あんまりお金掛かんないんじゃないかなあ」と思って。

それで台北郊外の――1時間ぐらいですかね――とこにやっぱり安いアパートがあって。それで今そこに住んでるんですけど。

pha わりと日本のそのセオリーはそのまま通じる?

大原 同じですね。

pha 同じですか。

大原 どこが安いかっていうのは。台北の市内なんて、場所によっては東京と変わんないぐらい家賃しますからねえ。

pha 食事とかは自炊ですか?

大原 外食文化なんでキッチンがないんですよ。学生のアパートだとなおさらで。

そうだから、食堂っていっても学生プライスなので。日本円でどうだろ? 160円とか70円ぐらいで精進料理のお弁当が食べれるので。

そこで野菜不足解消っていうか。ドカ盛りにしてもらって食べたりとかしてますね。

pha あー、良さそう。

大原 やっぱりキッチンがないのが辛いんですけど。でも果物買ってきたりとか。シリアル食べたりとか。まあそれなりにやってますね。それはそれで。

pha そんなにそれでもお金はかかんない?

大原 あんまり欲しい物がないのでねえ。

pha いい生活っぽい感じがします。

鶴見 ねえ。やろうと思えば日本で生きるよりも楽に、金銭的に楽に生きれちゃうという。

大原 うん。

鶴見 ですね。

大原 そうですね。

pha 「年収40万円で台湾ハッピーライフ」みたいな。

大原 そうですねえ。

pha 書けそうな(笑)。

鶴見 (笑)

大原 たまたま何か日本……

鶴見 最初台湾で出してこっちで翻訳する。

pha (笑)

大原 逆輸入みたいな(笑)。そうそうそう。たまたま私は日本の会社とやりとりが。

ライターの仕事とかも、ときどき日本にいた頃からお世話になってた会社とかに。

昔ライターやってたとき旅行雑誌に書いてることが多くて。その関係で「いま台湾に住んでまーす」とか言ったら「ちょっと取材行ってきてよ」とか言われて。時々行ったりするんですけど。

でもやっぱり現地の会社から受けることもあってですね。まあほんとに時給が、時給っていうか報酬が少ないので。さっさとやんないと法定最低賃金を割っちゃうぐらいなので。

まあ、ちょっと何とかしたいと思ってます。隠居するために。そんな感じですね。

(註1)「「周囲の誰もがいいと思う完ぺきな自分」が出来上がったとして、当の自分はその時幸せだろうか。「人からよく思われる」ことを一番の基準にしていたら、本来の幸せは望めない」(鶴見済「「人からどう思われるか」を基準に生きるのをやめる」/tsurumi's text)

(註2)「大原扁理君とphaさんとやるトークイベントが12月2日にあるが、この二人のいいところは「人からどう思われるかを基準にして生きる」というあまりにも一般的な現代的生き方をきっぱりと否定して、「自分の生きたいように生きる」ことを重視しているところだ」(鶴見済「「人からどう思われるか」を基準に生きるのをやめる」/tsurumi's text)

4.オルタナティブを作りたい