それぞれの幸福の自給自足法

2016年12月2日(金) @下北沢B&B

2.ホリエモン共感!?『年収90万円で東京ハッピーライフ』

大原 えーっと、私7月に、この太田出版から『年収90万円で東京ハッピーライフ』っていう本を書かせてもらったんですが(註1)。

本の話ねえ……きっかけは太田出版の編集者の方から、前著に『20代で隠居』っていうのがあるんですけど「そのメッセージを青少年向けに書いてみませんか?」って言われたのがきっかけでした。

pha 青少年向けなんですね。これ。

大原 まあ、一応そうなんです(笑)。そうして始まったんですけど。わたし何か、あんまり人に対して書くこともないので、って思ってたんですけど。

10代の頃の自分に向けて言いたいことなら「たくさんあるなあ」と思って。それで若干こう、踏み込んだというか。

悪く言えば、ちょっと押し付けがましい所もあるんじゃないかと思うんですけど。こういう本になりましたね。結果的に。

それでね、帯にね、ホリエモンが書いてくれたんです。

pha (笑)そうですね。

大原 ビックリしたんですけど。マジ想定外で。

pha (笑)ほんと何かね、働くの好きそう。働くのとかお金とか好きな人じゃないですか。堀江さん。

大原 堀江さんねえ。

pha 対極とも言える感じはしますけど。

大原 まあ、何か露悪的にやってる感じもしますけどね。

何でそうなったかって言うと、原稿が上がる時ぐらいになって、何か帯のコメントとかを「誰か想定してる方いますか?」って聞かれたんですけど。

そん時にあんまり知り合いもいないし、「ムヒカ大統領とかどうですか?」とか言って。

鶴見・pha (笑)

大原 すっごいスルーされて。「堀江さんとかどうですか?」って言われたんですね。編集者の方から。

鶴見 全然正反対ですよ(笑)。

pha (笑)

鶴見 ムヒカって貧困の大統領で。

大原 貧困の、そう。

鶴見 世界一貧困の大統領(註2)。

大原 そうなんですよ。もうね、黒船。清貧の黒船みたいな人なんですけど。

それでせっかくコメント頂くんだったら「真逆の人の方が面白いかな?」と私も思ってですね。じゃあ、何か「なるといいですね」なんてって言ってたら……。

鶴見 (笑)

大原 本当にOKしてくださって。いやもう、堀江さんの本は私もいくつか読んだことはあるんですけど。

確かに真逆みたいなんですけども、「よく似た人だなあ」と思うこともあってですね。

たぶん自分の……社会とか世間の基準をほんとにハナから信用してなくて。自分のワクワクすることしかやってない結果、この年収の開きが出た思うんですけど。

pha (笑)

大原 90万と、堀江さんたぶん9000万ぐらいあるんだと思うんですけど。はい。

でも何か「好きなことしかやってない」っていう所で同じなのかなあと。あと、だいたい世間のこと信じてないとかですね(註3)。

pha そうですね。

大原 私だから、堀江さんは放っといたらどんどん働くと思うんですけど。私は放っといたらどんどん隠居するんですよ。

……っていう違いでこうなっちゃったんじゃないかと。

pha たぶん堀江さんもそれはそれでいいと思うんですよね。働きたいやつだけ働いて。でも働かない人は隠居してればいい、みたいな。

何か僕の本も「面白い」って書いててくれたことがあったんですよ。『ニートの歩き方』を。

大原 それ読んだかもしれない。

pha 獄の中で。

大原 塀の向こうで。

pha 塀の向こうで(笑)。そうそうそう。

大原 読みました、みたいな本ですね。

pha 塀の中で読んだらしくて(註4)。だから「好きなことやってればいい」みたいなのでは通じる所がある。

鶴見 「みんなが自由に好きなこと突き詰めればいい」という新自由主義的なそういう考えが基盤にあるのかも。

pha そうですね。

鶴見 リバタリアンと言われたりとか。俺もよく知らないんですけど。

pha たぶんその辺の何か思想的なものを突き詰めると、違うとこ出てくる気もするんですけど。

大原 私だからほんとにお会いする機会があったらね、ちょっと聞きたいことたくさんあるので。「いつかそうなるといいなあ」と思うんですけど。

はい、私の本の話はそれぐらいですかね。

pha 本出して何か反響とかありましたか?

大原 地味に売れてるらしくて。ありがたいことで。

pha おー。

鶴見 4刷。

pha 4刷? おーすごい。

大原 4刷なんですよね。見たことない。そんな数字ねえ。

pha (笑)

大原 4刷なんてね。あのー、それで……4刷なんですよ。はい。

pha おー、すごい。

大原 それでね、いろいろ新聞とか。雑誌とか。たぶんブログに書いてくれた方も今日来てる方の中にいるんじゃないかと思うんですけど。ほんとにありがとうございます。

鶴見 取材もけっこう受けて。でも年収に関する取材が多いような。

大原 そこばっか取り上げられてねえ。あんまり、だからすごく誤解されがちだと思うんですけど。

別に貧乏自慢の本でもないし。うーん、何でしょうね。ITとかやってるわけでもないし。普通に……

pha 質素に普通に暮らしてる。

大原 質素に節約してたら「これぐらいで生きていけました」っていう。

pha だけど、それがみんなにとって新しいというか。みんな「もっといい生活はお金かかるものだ」って思ってるでしょうね。

大原 やったことないんでしょうね。まあ、会社辞めて多摩地区に引っ越す人もあんまりいないと思うんですけど。

pha うーん(笑)。まあ、90万円とか額が出てるとキャッチーなので。そこに食いつきやすいのは……

大原 このタイトルに色んなものが込められてますよね。「年収90万」と「東京ハッピーライフ」が両立しないって思ってるから。

pha うんうん。

大原 こんなタイトルだと思うんですよ。

pha いいタイトルですよね。これで。

大原 「ほんとにそうか?」っていう。

鶴見 批判もあるんですか?

大原 批判……うーん、批判するつもりあんまりないんですけど、

鶴見 いや、違う違う。批判される、される声。批判の声とかもあるのかなあ。

大原 あ、えーっと……あるんじゃないでしょうか。私の耳にあんまり届いて来ないんですけど。

でもたまにネットとか見てると、別に開いてないけどコメントが表示されてることがあって。目に入っちゃうことがあるんですけどねえ。

面白いですよね。批判的なコメントも。なかなか。

pha あー、面白いですよね(笑)。

鶴見 どんな風な傾向の批判?

大原 やっぱり税金・年金方面とかから攻めてくる人とか。

pha あー。

鶴見 え? 税金・年金?

大原 税金とか年金。

鶴見 「払ってるのか」っていう?

大原 そうそう。

鶴見 あー。

大原 払ってないんですけど。

鶴見 「払いもしないで」みたいな。

大原 あとは「こんな生活は出来るわけない」っていう信じない系の人とかもいるんですけど。

何かね、それ見ててすごく思うのは、日本人特有なのか分からないんですけど、自分が楽しいと思うこととか、幸せと思うことを追求するのに罪悪感があるような気がする。

pha あー。

鶴見 うんうん。

大原 何か「悪いことだと思ってるのかなあ」って。思ってないとこういうコメントにはならないんじゃないか。

まあ想像ですけどね。私聞いたことないので。本人たちに。

でも私は自分で幸せを、自分の幸せを追求することと、社会の繁栄って別に反発しないっていうか。つながってるような気もするし。

個人個人が幸せに生きてって、その結果社会が……ねえ。私もおかげ様で本が自由に売れてね(笑)。経済的に貢献しちゃってるもんですから。

pha それは好きなことやってたからそれにつながったわけでね。それを我慢して会社勤めとかしてたところで、別に誰か幸せになるわけでもないですしね。

大原 ただやっぱり結果が出てくるのって「こんだけ遅いんだな」っていうのを思いましたね。

私が隠居してて、25ぐらいで引きこもってですね。多摩地区に。で、本が出たのが29の終わりとかなんで。

5年ぐらい。隠居をしたっていうことの結果が、ある程度出てくるのが掛かってるんですよ。でも、今ってほんとにね、結果至上主義みたいな。

pha もう「すぐ結果出せ」みたいな感じ。

大原 「結果が出ないことに価値ない」みたいな感じだから。私みたいのがほんとに、ちょっとレアケースかもしれないんですけど。

でも時間を掛けた……時間を掛けることの――お金よりもね――時間掛けたことの大切さの方が儲かるなあと思ったりするんですけど。

pha そうですねえ。みんなせっかちなんじゃないですかね。もう、5年とか10年好きなことやらしてみないと分かんないというか。

大原 もたもたする時間、今の若い人なくて。なんか辛そうだなと。

鶴見さんの時代ってどうだったんですかね? 学校卒業してからブラブラしてる人とかいました?

今ほんとにブラブラ許さないじゃないですか。社会が。何かしてないと。

鶴見 俺は90年ぐらいに会社に入ったのか。89年とか。

その頃は今みたいにあれだったんで。バイト、フリーターみたいな感じで大学卒業してから続ける人っていなくって。みんな会社だったんで。

会社に入るには新卒と。新卒で入社……新卒ってことじゃないと「入社どうやってすんの?」みたいな感じだったから。

もうズルズル大学に。新卒で入らなきゃいけないから、大学に

大原 新卒で入るために留年みたいな。

鶴見 そうそうそう(笑)。俺だって1年留年してますからねえ。そういう変な感じだった。いやキツかったよ。でも。

大原 うーん、隙間時間が……

鶴見 でも今は何かね、質の違う何かのような気がする。今の方が楽だっていう感じはしない。あんまり。何かねえ……

pha いま何なんですかねえ。

鶴見 厳しいは厳しいような気がする。

大原 その当時生きてないですからね。あんまり比較が。あ、生きてるけど。ごめんなさい。何か……

鶴見 いやいやいや。そのぐらい歳離れてる。

pha (笑)

大原 変な扱いしちゃって。

鶴見 俺そういえばね、ツイッターとかでこの、これについて「いい本だ」みたいの書くと、

大原 はい。

鶴見 例えばこう、

大原 どれについてですか?

鶴見 その大原君の本について書いたことがあって(註5)。

大原 ありがとうございます。

鶴見 別にはっきり批判ってわけじゃないけど、「貧しいぞ!」って、「貧しい若者は生きられないぞ!」とかっていう類の運動、そういう運動してる人たちの反応は微妙な感じがしたという。

pha あー。

大原 「貧しい若者が生きられないぞ!」っていう運動してる人たちの反応。

鶴見 そうそうそう。「若者はお金がなくてもう死にそうだぞ!」っていうふうなことを訴えてる人たちの反応が微妙だったなあ、みたいな印象があって。

大原 へえー。

鶴見 「90万でハッピーライフ」って言われちゃったら、その人たちはもう年収100万でも、もっとでも

大原 うん。

鶴見 俺たちはもう死にそうで「政府は何とかしろ!」って言ってるのに、

大原 はいはい。

鶴見 「ハッピー」って言われちゃったら

pha (笑)

鶴見 ちょっと運動ガタガタみたい。「みんな死にそうだ」ってことでやってるからさ。

でもほんとは、俺もでもそん時に……何か若者が、お金が無さ過ぎてみんな死にそうで。みんな「生きさせろ!」って叫んでるとかいうのは「事実と違う」っていうふうに書いたんですけどね(註6)。

大原 あのー、うーん……。

鶴見 そういう「ハッピー」って言っちゃいけないようなノリは、そういうとこにもある。そっちにもあるっていう。

大原 何かそこにも、そんな所にも同調圧力みたいのがあるんでしょうか。

鶴見 それは運動だから何かこう……

大原 同調って言うとあれだけど。でもまあ、解決法はたくさんある方がいいですよね。私はそれを「自力でハッピーにしてきた」みたいな本なんですけど。これは。

だけど、国がやってる制度で解決されるべき貧しさもあると思うし。大事なのは手段とかやり方じゃなくて、自分の生きづらさが軽くなることですよ。

だから方法は何でもいいと思いますね。別にそこで何か批判とかする、し合う……そんな悲しいこともないですしね。

鶴見 まあでも、直に批判が来たわけでもないし。俺もまあ、運動、そういう社会運動としてみんなでワーッと、テーマをバーンと打ち出すのは別にいいと思ってるからね。

俺自身がそういうとこに参加したりしてるわけで。批判とかはない。

pha どっちも必要だと思うんですよね。「もっと賃金上げていこう」っていう運動も必要だし。賃金なくてもハッピーにやれる、考えようって。

大原 野草摘んでね。両輪で。

pha 何かね、両輪。どっちかだけでも良くないとは思うので。

別に年収90万でいいんだったら「もっと給料安くていいだろう」って経営者の人たちが言ったら「それはどうかな?」って思うし(笑)。

両方必要だと思いますね。バランスですよね。だから。

それは僕も言われますもんね。やっぱり何か『ニートの歩き方』とか『持たない幸福論』とか、そういうので幸せでもいいみたいなこと言うと、やっぱそういうことを言うと「格差が固定される」とか。

鶴見 うんうん。

pha もっと何か待遇を上げることを……

鶴見 「要求せねばならない」みたいな。

pha そうそうそう。それも分からなくはないですけど。そっちばっかりでも幸せになれないとか思うので。

鶴見 否定してるわけでもないしね。

pha 否定してないですからね。

大原 どっちかを選ばなきゃいけないって思うと辛いですよね。自分が賃金を上げるとかいうことで解決される方法と、自力でやってく方法が2つあった方がね。

こっちがダメだったらこっちって出来るし。そんな感じがいいですよね。

鶴見 まあ「俺はハッピーだ」って言えないっつーのは良くないかもしれないですよね。だけどね。やっぱね。

大原 ハッピーと言っちゃいけない、みたいな。

鶴見 「辛くなくちゃいけない」というのが違和感がある。

大原 辛くてなんぼ、みたいな。

鶴見 そういうノリがどっかにあるんだとしたら、そういうのは違和感を感じてしまうと。

大原 うーん、辛くてなんぼ……。

鶴見 そうですね。

大原 ちょっと何か台湾で見たことないなあ、と思って。やっぱり(笑)。

pha あー、日本的なんですかね。ハッピーな人を叩くっていうのは。

大原 (笑)そうなんですかねえ。

(註1)年収90万円で東京ハッピーライフ - 太田出版

(註2)世界でいちばん貧しい大統領ムヒカ「物は愛をくれません」/週刊女性PRIMEを参照。

(註3)「花の咲き方が違いすぎてまったく関係ない人みたいな感じなのに、世間を信用してないところとか、実は幸せということをお金に求めてないところとか、年収とか住んでる国はどうでもいいとか、意外にも根っこで共通するところあるな~とは思ってた」(大原扁理「メイキング・オブ・年収90万円で東京ハッピーライフ 第36回」/大原扁理のブログより)

(註4)pha「ホリエモンの思い出」/phaの日記を参照。

(註5)鶴見済(@wtsurumi)「大原扁理君@oharahenri の新刊『年収90万円で東京ハッピーライフ』、自分は本当はどうありたいのか、と考え続ける姿勢がいい。外の問題に振り回されるのではなく、静かに自分に向き合うこと。それしないと、幸せにはならない」2016年8月9日22:38:59ツイート

(註6)鶴見済(@wtsurumi)「カネがない者は、いつも満たされず、死にそうで、怒っているものだというある種の見方には抵抗があるし、事実と違うとも思う。賃金上げろとは言い続けるべきだが。|「30代年収90万円で都内隠居生活中」の大原扁理さんに聞く"楽な生き方" news.mynavi.jp/article/20160923-inkyo/」2016年9月24日22:03:11ツイート

3.「人からどう思われるか」を基準に生きるのをやめる